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アルバイト
「ま、まさか、本当に三本勝負させられるとは思わなかった……」
駅前のバーガーショップのテーブルにつっぷした、オレに、
「勝負って、軽く流しただけじゃない?」
あきれたように、
「タカ兄ぃって、ホント、体力無いよねぇ」
いきなり、50m三本勝負をさせられて、プールサイドでへばっていたオレを横目に、美樹はその後、2時間泳ぎっぱなしだったのだ。
「もう少し、運動した方が良いわよ?」
と、言いつつ、3個目のハンバーガーを平らげてしまった。
「しっかし、おまえ、よく食うなぁ……」
逆に、おれがあきれていると、
「そりゃぁ、運動すれば、おなかも空くわよ。 あっ、タカ兄ぃ、それいらないならちょうだい」
オレのハンバーガーにまで、手を伸ばしてくる。
「コラコラ、1個くらいはオレも食うって」
自分のトレーを死守しつつ、
「それより、今朝言ってた、いい話って何だよ?」
「え? あぁ、忘れてた」
ペロっと舌を出す。
「おいおい……」
「ゴメンゴメン」
まるで、反省の色無し。
「タカ兄ぃ、前のバイト、クビになっちゃったでしょ?」
「…………」
つい、暗い表情になってしまう。
「だ・か・らぁ、良いバイトの話、もってきたんだよ」
「えぇっ?」
「うちのおじいちゃんが管理人してるビル、知ってるでしょ?」
「あぁ、隣町のな」
美樹のおじいちゃんは、不動産管理の会社の社長だったらしい。
今、オレの住んでいるアパートも世話してもらった。
今は、現役を引退して、自分の会社のビルの管理人をしている。
「あそこの中の警備会社で、アルバイト募集してるんだって」
「え? 警備員か?」
「うん、基本的にはね」
「はぁ? なんなんだそりゃぁ?」
「とにかく、おじいちゃんの紹介ってことで、一度、面接来てみないかって」
「うぅーん……」
警備員か…… まぁ、土方のバイトとかよりは楽だろうけど。
「ちょっと、特殊な仕事もあるらしいけど、おじいちゃんの話だと、タカ兄ぃにぴったりらしいってよ?」
「なんだかなぁ……」
なんか、ちょっと怪しげだな。
「どうせ、タカ兄ぃ、暇してるじゃない?」
ちょっと、身を乗り出してきて、小声で、
「お給料もなかなかいいらしいよ?」
「そうか……」
どうせ、バイト探さなきゃ、遊びにも行けないしなぁ……
美樹のおじいちゃんのことだから、変な仕事を紹介するわけもないだろうし。
「じゃぁ、面接だけでも行ってみようかな?」
「うん、それがいいよ!」
なぜか、美樹はうれしそうに、
「それじゃぁ、おじいちゃんに連絡しとくね」
「あぁ……」
これが、間違いの始まりだった。
翌朝、さっそく電話がかかってきた。
「やぁ、タカ君。 元気にしてるかい?」
「あぁ、どうも、ごぶさたしております」
アパート紹介してもらったとき以来だから、一年ちょっとぶりだ。
「まぁ、カタイ挨拶は抜きだ。 面接、来てくれるんだって?」
「えぇ、まぁ、お話だけでも伺おうかと……」
「うん、それで、急な話で申し訳ないんだが、今日の午後からは空いてるかね?」
「えぇ、特に予定はありませんが?」
「じゃぁ、2時に来てくれないか? うちの場所は覚えてるよね?」
「はい、大丈夫です」
「それでは、会社の方には、話を通しておこう」
「よろしくお願いします」
「では、2時に。 一階の管理人室に声をかけてくれ。 私がいるから」
「はい、では、また後ほど」
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