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正義の味方誕生?


「キミ、正義の味方になりたくないかね?」
 一瞬、何を言われたのか、理解できなかった。
「はぁ? せ、せいぎのみかた……ですか?」
 桜吹雪警備保障社長、遠野金吾郎は、重々しくうなずいた。
「そう、正義の味方、だ」



「タカ兄ぃー! 起きてるぅー?」
 日曜の朝っぱらから、元気な声と共に、ショートカットの女の子が飛び込んでくる。
「なんだよ、美樹。休みの日くらいゆっくり寝かせてくれよ」
 はぎ取られた布団をかぶり直すと、めんどくさそうにつぶやいた。
「なぁーに言ってるの? タカ兄ぃ毎日お休みじゃない」
「ぅぐっ!」

 ――そう、もともとさぼり気味だった専門学校も、やっと夏休みに入り、これからはバイトに励むぞぉ…… と、気合いを入れてた矢先、いきなり、クビを言い渡されてしまったのだ
 バイトで、夏休みに遊ぶ金を稼ごうと思っていたオレは、これで、夏は終わってしまった…… と、ふて寝していたのである。

 図星指されてしまって、オレが固まってると、あわてて、
「あ、ごめんごめん。やっぱり気にしてるんだ」
 ほんの一瞬だけ、心配そうな顔をしたかと思ったけど、すぐにふくれっ面で、
「でもさぁ、日曜は一日つきあってくれるって、約束したじゃない?」
 もう次の瞬間には、にっこり笑っている。
「そ・れ・に、金穴で苦しんでいるお兄様に、いい話も持ってきてあげたんだから」
 まだ、頭がボーッとしているオレは、
「なんだそりゃ?」
 と言いつつも、必死になって布団にしがみついていたが、
「とりあえず、今日も暑くなりそうだから、プールにでも行こうよ。ほぉらぁ、早く起きる起きる!」
 あっさりと、寝床から追い出されてしまった。


 一歩、外へ出ると、梅雨明け直後の夏の日差しが、容赦なく照りつける。
「うげぇ……」
 まだ、午前中だと言うのに、解けてしまいそうな暑さにうんざりしてると、
「ほらほら、じっとしてても暑いだけだから、とっとと歩く、歩く!」
 美樹はやたらと上機嫌だ。

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