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なつやすみ


「タカ君は大きくなったら、なにになりたいかね」
 一緒にテレビを見ていたおじいちゃんが、たずねてきた。
「やっぱり、正義の味方かな」
「ほほぅ、正義の味方、か…」
 テレビではちょうど、今、悪の怪人がすべて倒され、親玉が追いつめられているところだった。
「うん、正義の味方になって、みんなを守るんだ」
 突然、背中にちっちゃな女の子が飛びついてきた。
「そのときは、あたしもまもってくれる?」
「も、もちろんだよ。みぃちゃんは一番で守ってあげる」
 背中のやわらかな感触に、ちょっとドキドキしながら答えると、
「わーい! タカにい、やくそくだよぉ」
 背中越しに、ほっぺにキスされてしまった。

 結局、悪の親玉は逃げたのか、正義の味方に倒されたのか、どうしても思い出せない。

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